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千葉地方裁判所 昭和56年(わ)128号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

本件は、けん銃等の密輸入事犯を防圧するため昭和四〇年の銃砲刀剣類所持等取締法の一部改正で新設された同法三条の二(けん銃等の輸入の禁止)に規定する「けん銃」に、一八六四年米国製のコルトポケット型三一口径管打回転弾倉式けん銃が含まれるかが争われた事案である。

弁護人は、本件けん銃は、古式銃砲で同法一四条(登録)に定める登録の要件を実質において備えるものである(本件けん銃は、未登録である)から、同法三条の二の「けん銃」に該当しない旨主張して争つた。

銃砲の歴史は、装填した火薬の発火方式の点からみると、指火式、火なわ式、火打ち石式、管打ち式、弾薬筒式(ピン打ち式・紙薬包式・辺縁打撃式)を経て近代銃砲である金属性薬きよう式へと進歩発展したといわれており(東京地裁昭55.10.27民事第二部判決本誌四二七号九七頁参照)、同法一四条四項に基づく銃砲刀剣類登録規則四条(鑑定の基準)には、古式銃砲として火なわ式、火打ち石式、管打式、紙薬包式、ピン打ち式が列挙されている。

本件のような古式のけん銃が同法三条の二の「けん銃」に含まれるか、同法一四条の登録制度と同法三条の二の輸入の禁止との関係いかん等の問題について判示した裁判例は見当たらず、本件についての判断が待たれていたところ、本判決は、「古式銃砲だからといつて直ちに無条件で『けん銃』でなくなるわけではない。」「美術価値、骨とう価値があるものでも武器性を有するならば輸入を禁止するのが法意である。」旨判示し、本件けん銃が武器としての性能を高度に有しているという実態に着目して、右弁護人の主張をしりぞけ有罪とした。

同法の立法目的及び同法三条の二が規定する一号から五号までの適用除外事由の中に、同法一四条の登録を受けたものが入つていないこと(所持を禁止した同法三条では、六号で登録を受けたものの所持を適用除外事由の一つとしている)等からみて、本判決は妥当なものと思われる。なお、被告人が控訴しているので、高裁の判断にも注目したい。

【判旨】

(罪となるべき事実)

被告人は、コルトポケット型三一口径管打回転弾倉式けん銃一丁(昭和五六年押第八〇号の一)を官に発覚することなく輸入しようと企て

第一 法定の除外事由がないのに、昭和五五年一二月三〇日右けん銃一丁をウレタンで包装したうえ、これをダンボール箱内に梱包携帯してアメリカ合衆国ロスアンゼルス空港から大韓航空〇〇一便に搭乗し、同月三一日午後五時三〇分ころ、千葉県成田市三里塚字御料牧場一番地の一所在の新東京国際空港に到着して本邦内に持ち込み、もつてけん銃を輸入し

第二 同五六年一月二一日午前一一時ころ、同県同市駒井野字天並野二一五九番地所在の東京税関成田税関支署輸入通関第三部門において、通関業者である株式会社阪急交通社の社員を介して業務通関を受けるに際し、右けん銃をダンボール箱内に別途梱包所持していることを秘して、申告すべきものは右ダンボール箱内の日本刀三振及び管打ち式銃一丁のみである旨同支署係官に申告し、もつて税関長の許可を受けないで右けん銃を輸入しようとしたが、同支署係官に発見されたためその目的を遂げなかつた

ものである。

(補足説明)

弁護人は、銃刀法一四条に定める登録の要件を実質において備えるけん銃は同法三条の二において輸入を禁止されている「けん銃」に該当しない旨特に主張するので、この点につき若干付言する。

まず、銃刀法における銃器規制の沿革並びに同法三条の二の法意に鑑みれば、同法二条、三条の二にいう「けん銃」とは形態上のそれであるだけでは足りず、武器としての本来の性能を有するものであることを要する旨の所論には首肯できるものがある。しかし右の性能の有無、程度は、最終的には当該銃器について個別具体的に判断されるものであるべく、製作年代乃至型式、機構上の一般分類上同法一四条の「古式銃砲」にあたるからといつて、それが直ちに無条件で「けん銃」でないことを意味するという筋合いのものではない。

これを本件銃器についてみると、前掲各証拠によれば、本件コルトポケット型三一口径回転弾倉式けん銃は西暦一八六四年に製造されたものであるが、その近代式けん銃との相違は、発火機構がいわゆる管打式であつて、弾丸等の装填の簡便迅速性において劣るものがあるという点に止まるのであり、素よりそれは実用の武器として製造され、鉛弾を正常に発射する性能を有し、しかもその殺傷力は警察官が現在使用しているけん銃と比べても遜色のない程度であり、六連発式で連射も可能である等の諸事実も認められるから、これを現に武器としての性能を高度に有しているものと判断しないわけにはいかない。

また、武器としての性能は当該銃器の美術価値、骨とう価値と併存し得るものであつて、これらの価値のゆえに武器たる性質を失うものでないことは素より、これらの価値がありさえすれば、その武器性にもかかわらずかつ同法三条の二の除外事由に該当しないにもかかわらず、輸入を禁じない法意であるとは条文上到底解されない。

たしかに、銃器取締の実情は、如上の見地から輸入禁止物であると認められるけん銃についても、同法一四条の登録が得られるときは情を酌んでその輸入を黙許し、あえて同法三条の二違反の罪を問わずに済ますというものであつたことは窺知するにかたくないが、素よりかような取締の実情は犯罪の成否そのものとは別個の事柄である。

なお、前掲各証拠から認められる本件銃の輸入目的、輸入態様、武器としての性能、就中高度の殺傷能力を有する点などに徴すると、修理のため国外に搬出した銃を再び国内に搬入しようとしたものであるという事情を考慮しても、本件銃を輸入する行為につき違法性が存することは明白である。

(柴田孝夫 多田周弘 播磨俊和)

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